お酒(酒類)の販売の事業の免許 「法人成り」

お酒(酒類)の販売の事業の免許の「法人成り」については、酒税法の法令解釈の通達で規定されています。しかし、この酒税法の法令解釈の通達では、「法人成り」はお酒(酒類)の販売の事業についてだけが規定されており、お酒(酒類)の製造の免許に関しての規定はありません。これはお酒(酒類)の免許の相続が、製造の事業でも販売の事業でも酒税法そのもので規定されていることに比較すると、相当に片手落ちのようにも思えます。

しかし、この情報欄「お酒(酒類)の免許の相続」でも述べましたとおり、①相続は世の条理として起こることであり、②お酒(酒類)の製造の免許については、個人が事業者として免許を取得している場合がレアであること、③お酒(酒類)の製造の免許については酒税の安定的な保全に直接的に不可欠な免許であること、さらに④「法人成り」ということは、お酒(酒類)の免許を取得している者の自由裁量等に基づく免許の取得の変更であることから、酒税法では全体としてこのような規定になっていると考えられます。

では、お酒(酒類)の販売の事業の免許に関する「法人成り」についてその取扱いを説明します。

お酒(酒類)の販売の事業の「法人成り」は、お酒(酒類)の販売の免許を取得していた個人の事業者が、その営業の主体の人格を、個人から法人に変更する形態等をいいます。通常は、そのお酒(酒類)の販売の事業の免許を取得していた個人が主体となって法人の組織を設立して、そのお酒(酒類)の販売の免許を当該の販売場において引き続き、法人としてお酒(酒類)の販売の免許の取得した者として事業を行っていく事例であり手続き(申請)です。これは実質的には、新たに法人がお酒(酒類)の販売の事業の免許を取得して営業を行うことと同じですので、お酒(酒類)の販売の事業の免許の申請は的確に行わなければなりません。

しかし、酒税法の第9条、酒税法の法令解釈の通達の第9条1項関係14に明文上の規定があることから、新規の販売の免許の取得よりは手続などが 簡素化されています。そしてその一番大きな利点は、個人で、お酒(酒類)の販売の免許の取得者であった営業の状態を、そのまま法人として継続してお酒(酒類)の販売の事業を行うことができる、ということにあります(なお、個人の販売の事業者の時の残ったお酒(酒類)の処分は適切に行う必要があります)。 但し、「全酒類卸売業免許」のように抽選により申請できる免許の場合は、個人の販売の免許の事業者で取得していた免許がそのまま法人に引継ぎが可能か否かは、それまでの販売の実態などを考慮されることになります。

「全酒類卸売業免許」は取得していたが、実際は小売の事業しか行っていなかったとか 又は 販売の数量が少なかったというような場合には、そのまま法人への販売の免許の引継ぎ(取得)はできません。

引き続き、法人として「全酒類卸売業免許」を継続したい(取得したい)場合には、年に1回行われる抽選により免許の申請ができるか否かが決まります(実質的には、「全酒類卸売業免許」の者としての販売の実績を有していたか否か、という考え方です)。