酒類の販売業免許って譲渡できるの?
お酒(酒類)の販売(販売を業とする場合)には免許が必要です。
酒類の販売場の所轄の税務署に申請して酒類の販売業免許を取得しなければお酒(酒類)は販売できませんし、無免許でお酒(酒類)を販売してしまった場合には「懲役1年以下もしくは50万円以下の罰金」という罰則が科せられます。
では、表題に戻って、酒類販売業免許の譲渡という行為はあり得るのでしょうか?
もちろん、合法的な 酒類販売業免許 の譲渡です。
これについては、さらにお酒(酒類)の販売業免許の譲渡を次のような区分で検討することが必要になるでしょう。
- パターン1 個人 ⇒ 個人へ譲渡
- パターン2 個人 ⇒ 法人へ譲渡
- パターン3 法人 ⇒ 個人へ譲渡
- パターン4 法人 ⇒ 法人へ譲渡
パターン1 酒類の販売業免許の個人の免許者から個人への譲渡
これについては、原則として譲渡することはできません。(例外あり)
酒類の販売業免許(主に酒類小売業免許)は、“個人”と“販売場”を不可分に特定して免許を付与されているからです。
このパターンですと、免許の譲渡により、個人の免許者が変更になるのですか
ら、当然に譲渡はできません。
【重要】
しかし、譲渡という意味を広く解釈すれば、お酒(酒類)の販売業免許の個人の免許者が死亡した場合は、相続により酒類販売業免許を引き継ぐことが可能です。これには、相続人の他、包括遺贈者も含まれます。(酒税法第19条 及び 法令解釈の通達の第19条関係) = この「税務行政最新情報 2019/04/15/ 《酒類免許の相続》 参照」
パターン2 酒類の販売業免許の個人の免許者から法人への譲渡
これについても、原則として譲渡することはできません。(例外あり)
酒類の販売業免許(主に酒類小売業免許)は、“個人”と“販売場”を不可分に特
定して免許を付与されているからです。
このパターンですと、免許の譲渡により、個人の免許者が、法人の人格に変更
になるのですから、当然に譲渡はできません。
【重要】
しかし、譲渡という意味を広く解釈すれば、お酒(酒類)の販売業免許の個人の免許者が、法人を設立してその代表者等として事業を継続する場合は、“法人成り”により引き継ぐことが可能です。(酒税法の法令解釈の通達の第9条関係) = この「税務行政最新情報 2019/04/15/ 《酒類販売業の法人成り》 参照」
パターン3 酒類販売業免許を有する法人の免許者から個人への譲渡
これについては、譲渡することはできません。酒類の販売業免許(主に酒類小
売業免許)は、“法人”の人格と“販売場”を不可分に特定して免許を付与されてい
るからです。
このパターンですと、免許譲渡により、法人の免許者が、個人の人格に変更に
なるのですから、当然に譲渡はできません。
【重要】
しかし、税務当局(税務署)の第一線では、所謂“個人成り”という実質的には酒類の販売業免許(主に酒類小売業免許)の再取得が行われています。
お酒(酒類)の販売業免許を有する法人(法人格)の免許者(代表者等)が、法人で取得している酒類の販売業免許(主に酒類小売業免許)を廃止(取消)して、再度、個人の免許者として同一の販売場等で酒類の販売業免許を取得し直す事例です。 = この「税務行政最新情報 2019/04/15/ 《酒類販売業の個人成り》 参照」
パターン4 酒類の販売業免許を有する法人の免許者から他の法人への譲渡
これについては、一般的に散見される事例であり、手続等を適切に行えば、可
能な免許譲渡と言えます。
この場合の手法は、法人間のM&A(企業合併、企業買収であり、酒類事業部門の事業譲渡や資本提携等を含めた広い意味を含みます)であり、酒類の販売業免許をどうしても取得したいという場合に行われます。ですから、“免許譲渡”という言葉のイメージからは離れるのかも知れません。
酒類販売業免許は、“法人”の人格と“販売場”を不可分に特定して免許を付与
されていますので、ここでは、免許の相談・情報を簡潔に説明するため、
- 酒類販売業免許を取得している法人を合併法人、酒類販売業免許を取得したい法人を被合併法人とします。
- 免許譲渡が成立(形式的には吸収合併の成立)するまでは、当面、社名変更や酒類の販売場の移転は行わないこととします。
以上の相談・情報をお読みになれば理解できるとおり、酒類販売業免許を取得
したい法人が酒類販売業免許を取得している法人に吸収合併される、という形
態が取られることが多いと言えます。
長くなりましたが、大切な事なので、もう一度、簡単にまとめてみます。
酒類販売業免許(主に酒類小売業免許)は、基本的には譲渡できません。
ですから、酒販事業の部門を譲り受けた場合も、酒販免許は新たに取得しなければなりません。(酒販事業という組織を譲渡されても、酒販免許は付いてはきません。)
これを忘れたまま酒販免許なしに事業を行ってしまうと、上述した「懲役1年以下もしくは50万円以下の罰金」という罰則の対象となりますので、ご注意ください。
M&Aによる酒販免許の承継に関する疑問や申請方法は行政書士などへ相談
上記では、酒販事業の譲渡はできても酒販免許は基本的に譲渡できない、とご紹介しました。しかし、会社合併など、あるいは営業譲渡が発生した場合に、一定の条件を満たせば酒販免許の譲渡が可能な場合もあります。
その条件には、
- 新規の酒類卸売業免許申請書の提出に併せて、それまで営業をしていた既存販売場に関する酒類販売業免許の取消申請書が提出されていること
- 既存販売場が休業していなかったこと
などが挙げられます。
酒販免許の譲渡や承継などについては、条件や必要な申請などが細かく取り決められているため、税務に関して専門的な知識を有して適格なサポートをしてくれる行政書士などへ相談されることが重要です。
事業や実態、条件などにより、ケースバイケースとなりますので、「この通りやれば大丈夫」というわけにはいきません。
不安を抱えたまま免許譲渡を行うのではなく、信頼できる行政書士のサポートのもと、安心して免許取得して酒販事業が継続できるように手続きを行いましょう。