酒類販売媒介業免許と酒類販売代理業免許は酒税法上で規定されている酒類免許であり、いずれも酒類販売業(広義)に属すると定義される免許です。

酒税法上で、“製造免許”、“販売業免許”以外にその区分が規定されているのはこの2つの酒類免許だけであり、いずれも他の免許とはその特性や取扱いが異なる免許であると言えます。

1 酒類販売媒介業免許

酒類販売媒介業免許は、実質的意味では、私が平成14年に署の酒類指導官であった時、国税庁及び東京国税局の酒税課と綿密な協議の上、ある大手酒類製造者の子会社に免許付与した事例が最初であると言えます。

ですから、当時(現代でも)は、この酒類販売媒介業免許を取得するということは至難の業であり、その審査も厳密を極めたことは言うまでもありません。酒税法上に規定されているとは言え、その必要性が相当疑問視されていたからです。
酒類販売業免許は、その事業計画に照らして真に必要な範囲(販売条件付)でしか免許付与されません。

ましてや媒介業免許となれば、他の事業方法あるいは他の酒類販売業免許では何故、事業の遂行ができないのか、という基本的な第一歩からの審査が始まりました。
酒類販売媒介業免許は、歴史的には、昭和50年(1975年)前後に全国で約20程度の大手酒類製造者(酒税法上の“原料用アルコール”の製造免許を有する者)に税務当局が免許付与した実績がありました。

これはどのような事例かというと、当該大手酒類製造者が全国の中小清酒製造者に清酒の原料用として“原料用アルコール”をタンクローリーで配送する際に、各製造場から「今年は清酒を製造し過ぎた」あるいは「清酒の製造量が足りなかった」という情報を得て、その清酒製造量に過不足を生じた清酒製造者間の所謂“桶売り”の媒介をしたということに端を発しています。

これすなわち酒類の媒介業と言えるでしょう。現代のようにインターネット等の情報伝達手段が無かった頃の免許であると言えます。
しかし、現代はその逆に、酒類販売の情報が過多であり、酒類取引の利便性や円滑化等のために、この酒類販売媒介業免許が必要になってきている、とも言えるでしょう。

2 酒類販売代理業免許

酒類販売代理業免許は、基本的な考え方として、何らかの区分の酒類販売業免許を有する者の販売代理業を行うことを前提としています。

ですから、何故その販売業免許者が販売代理業者を必要とするのか、というところから検討していく必要があります。
本来の酒類販売業免許者がどのような理由で販売代理業者を置かなければいけないのか、酒類免許者本人では事業が出来ないのか、一方で酒類販売代理業免許を申請する者本人がいずれかの区分の酒類販売業免許を取得することでは足りないのか、その理由は何か、というような点が申請段階で繰り返し質問・審査されることになるでしょう。

酒類販売媒介業免許と酒類販売代理業免許の申請については、酒税法に精通している行政書士等に事前に相談してから、万が一、申請・取得できる可能性があるとアドバイスされた場合のみ、免許申請を委任されるよう強くお勧めします。
税務当局は、酒類免許を付与しなければならない、という感覚は持っていません。白紙からの出発です。

酒税法上でその申請経緯・理論に矛盾なく、かつ免許要件のすべてを(網羅的な確実性で有している)満たしている場合以外は酒類免許を付与する必要はないのです。

特に、この2つの酒類販売業免許では、門前払いを受けたうえ、「あの申請者は何も理解していない=酒類販売業免許者としての資質に欠ける」と判断されない方が得策と言えます。
最後に、酒類販売代理業免許については、現在までに付与された事例はない、と認識しています。